人が真ん中のまちづくり
旧産炭地の大牟田市を中心に、「人が真ん中のまちづくりでまちの再生」を掲げて、市民参加の福祉事業による地域の活性化に取り組んでいるNPO法人です。設立は2001年です。
90年代後半の大牟田では、高齢者介護を中心とした市民の福祉拡充運動が活発化し、今日に続く「宅老所」の自主建設・自主運営が実現することになりました。 詳しくは・・・
その活動を担ったボランティア活動家が、高齢者介護に限定しない、より広範な福祉全般の視点に立って大牟田の活性化、まちづくりを考えようと立ち上げた勉強会が、福祉でまちがよみがえる会の出発でした。
その後、今日に至るまで、介護事業をはじめとした多様な福祉事業を通して市民参加の地域づくりに取り組んでいます。詳しくは・・・
新しい福祉の充実をめざして
そうした活動の一環として、「日本の福祉が置き去りにしてきた分野」への挑戦を、福岡県立大学と連携して進めてきたのが、「足の不自由な方たちの歩行をサポートできる靴」の普及への取り組みでした。
ほとんどの日本人は、靴を下駄、草履に代わる外出用の履物として、着物の洋装化の延長に受け入れてきました。そのため、登山靴とかバスケットシューズとかが、それぞれに適した靴という意識はあっても、普段履きの靴が「歩くための道具」であると考える日本人はまずいません。
だから、「道具」には付き物の「取扱説明」を普段履きの靴を履くときに意識している人は稀で、そもそも「正しい靴の履き方」を子供たちに教え、躾ける大人がいないのですから、ほとんどの日本人が意識するはずがないのです。
このため、日本では、障がいや病気のためだけではなく、加齢による足、脚の衰えが原因の方たちも、足の不自由な方たちには、その人その人にとっての「歩くための道具としての靴」がある、ということが知られていません。それどころか、「脱ぎ履きしやすい」とか「軽くて柔らか」とかを謳い文句にする「リハビリシューズ」と呼ばれる靴が、およそ「歩くための道具」とはかけ離れた、少なくとも「歩行のリハビリ」とは無縁の靴であることを、提供する方も、使う方も全く気づいていません。
だから、福祉の中でも、足の不自由な方には、障がいや病気が原因であれば「装具」を、また、加齢等が原因であれば、杖や歩行器などの「福祉用具」を、とはなっても、「靴」とはなりません。それを象徴するのが障がいや病気で市販靴が履けない方達に支給される「靴型装具」です。
それは、「靴ではなく、靴の形をした装具」とされている通り、障がい等があるかないかで左右を別々に扱い、障がい等がある側には「靴型装具」を、ない側は「靴」で良い、ということになっています。
そこには、「靴が左右一対で歩くための道具」であるという認識が完全に抜け落ちていますが、それは、福祉現場だけの問題ではなく、私たち自身が、毎日履いている靴に対して、そのような認識を持っていないことと深く関わっているのです。
このため、靴が「歩くための道具」として伝統的に根付いている国々の「福祉の標準」から大きく取り残された、まさに「日本の福祉が置き去りにしてきた分野」が、「歩行をサポートできる靴による福祉の拡充」だったのです。
学び、実践した15年の成果
2007年から始まった福岡県立大学のプロジェクトに参加し、足が不自由な方の歩行をサポートできる靴の技術(整形外科靴技術)を学び始め、2008年には、技術を磨く実践の場として、「シャッター通り化」していた商店街の一角に「足と靴の相談室ぐーぱ」を開設しました。
それからというもの、予想を超える反響で、「これほど足と靴に困っている方たちがいたのか」と驚きながら、この事業の意義を噛み締め、日々の技術習得に励む毎日が続きました。
それから15年、地元の医師との連携も広がり、外反母趾などで履ける靴がなくてお困りの方から、リウマチ、まひなどの疾患や障がいで歩行が困難な方まで、病院や装具業者が提供する靴では歩行ができない多くの方達に満足してもらえる靴の提供を行ってきました。
さらに、県立大学が実施する「足と靴の健康講座」を、啓発事業として定期的に大牟田へ招聘するとともに、やはり大学が実施する技術者養成の出前講座を継続して開催することによって技術者の養成にも取り組んできました。
その結果、県立大学でのプロジェクト終了後は、大学の成果を県内で継承し、整形外科靴技術の普及活動を推進する役割を担うようになり、こうした多様な事業の成果として、NPOが非営利事業として担ってきた靴の販売事業を、自身の経済活動として継承する若い技術者が育成されることにもなりました。
「足と靴の相談室ぐーぱ」による靴の販売事業が、「靴工房」として独立自営化されたことにより、今では、「靴型装具の悩み相談」をはじめとした、大学の成果を継承する整形外科靴技術の普及活動、足の保健推進活動を、県立大学関係者やNPO法人靴総合技術研究所とともに、NPOの非営利活動として展開しています。
多くの団体との連携、協力事業の推進
このような独自の足の保健推進活動の他に、宅老所の事業主体である「NPO法人よかよかネットワーク」と協力して、高齢者介護の宅老所「藤井さん家」、地域交流拠点の「よらんかん」等の、福祉事業を主業務として担うと同時に、障がい福祉団体や商店街と連携した多様なまちづくり事業に取り組んでいます。
また、ネットワーク支援事業として、生産者と消費者が共に農作物を育てる「いちのたんぼの会」や、「3 . 1 1 フクシマ」を自分たちの問題として考える「原発事故に学ぶ実行委員会」の活動にも参加しています。